設計デザイナーと大工棟梁の
最強コンビが創る上質な住まい。
取材・文/三枝史子 撮影/KEN五島住まいの提案、北海道
建物と一体型のカーポートと、庭に張り出した平屋部分で変化をつけた個性的な佇まい。外壁に採用したガルバリウム鋼板もデザインを変えて使い分けている。マイホームの完成は2018年5月。オーナーは30代のSさんご夫婦で、小5と5歳の男の子がいる。
HS DESIGNと出会うまで、複数のハウスメーカーとやり取りを重ねてきた。土地が決まりそうになってはタッチの差で叶わなかったり、転勤で計画が流れてしまったり。気持ちを取り直して住まいづくりを再開したのは、いまから2年前である。ご主人がネットサーフィンをしながらビルダーを探すうち、同社で住まいづくりを実現したオーナーによる「マイホームブログ」に行き着いた。住まいづくりの詳細を綴ったブログに興味を持ち、そのオーナーに直接メールでHS DESIGNの評判を聞きてみると、満足の声しか得られなかった。そこで、同社アポを入れ、まずはご主人単独で社長の城下さんを訪問。「いままでは営業さんが相手だったので、直接設計士さんと話すのははじめて。正直、敷居の高さも感じ緊張しながら会いに行ったのを覚えています」。ぐいぐい迫られたらどうしよう…、そんな不安とは裏腹に、迎えてくれた城下さんは拍子抜けするほど、物腰のやわらかい人だった。「全然、押してこない(笑)。でも、家に対する考えはしっかり持っていて、静かなる情熱を燃やしている感じ。初対面でファンになってしまいました」。
帰宅したご主人は、城下さんとその住まいづくりの魅力を夢中で語るあまり、奥さまに「少し冷静になれ」といわれたほどだ。その後、ふたり揃ってHS DESIGNの手がけた住宅を見学し、繊細なこだわりやデザインセンスを直に体感。実物を目にして、デザイン性の高さと暮らしやすさの調和が取れた住まいづくりに、奥さまも惚れ込んだのはいうまでもない。
玄関ドアを開けると、静謐な空間が出迎えてくれる。四角く切り取られたホールの床、広々とした三和土の奥に品よく設えられた紳士靴のディスプレイ。ブティックを思わせる玄関ホールはご主人のこだわりでもある。「昔から靴が好きで、なんとか上手に収納できないものかと考えていました。靴が映えるようにベースの木の種類まで提案してもらったんですよ」。ホールには靴磨きに便利なベンチも設けられ、おおらかなこの空間で愛用品を手入れするのは至福のひとときだ。
住まい全体に流れている上質な感覚は、他社では味わえなかったものだと奥さまはいう。たとえば、巾木をあえて使わないスタイルもそのひとつ。巾木がないぶん、床と壁の境目の仕上げには気を使うものだが、てまひまかけて美しく収めることで住空間はムダなく洗練され、そうした積み重ねが「なんか、いいね」という一言では表せない満足感につながってゆくのだ。「うまくいえないのですが、人が気づかない小さなこだわりを大切にしているのだなと。おしゃれなんだけど、それだけじゃなく生活しやすさがきちんと考えられているというか。この家で暮らして、いままで見過ごしていたデザインの重要性が理解できたような気がします」。
設計を担当する城下さんと、施工を担う大工の棟梁・糸岡さんとの息の合うコンビネーションもSさんご夫婦をよろこばせた。「現場でつくりながら、壁にウッドパネルをあしらうなど、いいと思ったことはその場でトライしたり、造作の細かい部分を変更したり、2人のちょっとした提案がいつも楽しみでした」とご主人。また、「糸岡棟梁の女子力(?)の高さには驚きです(笑)。収納の相談でも盛り上がりましたっけ」というのは奥さまだ。使い勝手のいいキッチン収納の棚の高さや配置など、これまでの施工経験に基づくアドバイスが役立った。休みのたびに現場へ足を運び、毎回わくわくしながら進んでいった住まいづくり。家族の夢が少しずつカタチになっていく様を目のあたりにし、工事の終了を寂しく感じるほどだったという。
新居での生活は半年を超えたが、いまだに新鮮な感動は褪せることがない。仕事を終えて家路へ向かうとき、門柱を照らす光を見ては「あー、いい家だなぁ」。食卓を囲んで家族とおしゃべりをかわすときにも「なんて、すてきな家なんだろう」。とにかく、「酔える空間」がそこかしこにあるのだという。あったかい家族がいて。みんなわが家が大好きで。これほど豊かな人生はあるだろうか。
<設計のポイント>
- 異なるデザインの外壁を使い、建物とカーポートを一体化させた変化に富んだ外観。
- ご主人愛用の革靴が美しくディスプレイされたブティックのような玄関ホール。
- 道産のナラ材など豊かな自然素材と、クオリティの高いデザインが奏でる住空間。
- 建物とコンクリート塀で四角く囲み、プライベートが保たれた中庭。
- キッチンと並列に設けた和室は、中庭を望む離れのような空間に。
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