おおらかな空間が心地よい、
ロフトのある平屋住宅。

住まいの提案、北海道

仙台在住のオーナーとメールを駆使した遠距離住まいづくり。

一見すると2階建てのこの家は、開放的な吹き抜けを設けた平屋のつくり。
高さを生かした空間にフレキシブルな動線が描かれ、一部に設けたロフトとともに、暮らしの楽しみを広げている。

木製枠の大きな窓が解放感を呼ぶリビング。キッチンや書斎コーナー、ロフトとの一体感が楽しい。

仙台で暮らしていたHさんご家族が札幌に家を建てようと考えたのは、東日本大震災がきっかけだった。たびたび襲われる余震に、それまで住んでいた古いマンションが不安になり、中心部に引っ越すも、愛犬かりんちゃんの散歩がままならない。やがてストレスは限界を超え、ご夫婦の故郷である札幌へ帰ろうと決断したのだ。ご主人はしばらくは仙台で仕事を続け、とりあえず奥さまとお母さまが先に戻ることにした。忙しいご主人に代わって、札幌への移転計画は奥さまが担当。愛犬との同居を考え、新居は一戸建てと決めていた。インターネットによる土地探しと並行しながら、札幌のビルダーや建築家ともコンタクトをとり、そのなかで出会ったのがHSDESIGNだった。社長の城下秀樹さんが一人でやっているところに、まず信頼がもてたという。「営業の方を通さず、直接こちらの希望を伝えられるのがよかったです。メールでやり取りしても、すぐに返してくれる。質問にもその都度、具体的に応えてくれました。仙台と札幌という、遠隔でのコミュニケーションに最初は不安でしたが、大丈夫と言ってくださったのでお任せすることにしました」。候補にあげていた土地を伝えると、城下さんはさっそく現地を視察し、その場で撮影した動画と敷地情報をメールで送信。土地の購入が決まったときも、手続きなどをサポートした。「城下さんとの初顔合わせは、主人といっしょに土地の契約で現地を訪れた昨年3月。ああ、この人なら安心、とあらためて確信しました。というか、はじめて会った気がしませんでしたね(笑)」。

ストーブの横には薪小屋に続く出入り口。

5月になると、奥さまが先発隊として札幌の実家へ拠点を移し、いよいよプランが本格化。敷地はおよそ80坪あり、平屋を希望。当初、北欧風のデザインが好きというぐらいでイメージは固まっていなかったが、城下さんの自宅兼オフィスや手がけた住宅を見学し、おおいに参考になったという。実家が敷地に近いことから、毎日のように現場へ足を運んだ。「家が少しずつでき上がるのが楽しくて、楽しくて。主人や義母に現場の様子を伝えたくて、写真をたくさん撮ってブログにもアップ。おかげでいい記録になりました」。

ロフトの上からリビングを眺めるのもいい気分。天井の低さはかえって落ち着きがあり、趣味には最適の空間。

オーナーが現場に来るメリットは、その場で変更や修正を伝えられる点だ。大きさや色の感じ、照明の位置など図面で確認したつもりでも、実際にはイメージが違っている場合もある。現場でのこまめな確認が、納得のゆく住まいづくりにつながるのだ。6月に着工し9月末に完成した住まいは、吹き抜けの下に広がるリビングと主寝室、離れの風情をもたせたお母さまの部屋という構成。それに、玄関脇の予備室と書斎コーナー、大きなロフトが暮らしをさらに魅力的にしている。

リビングに置いた薪ストーブは、主暖房として毎日活躍。「蓄熱式のセントラル暖房があるので、私は最初、要らないんじゃないかと思っていたのに、いざ使ってみると心地よくて。主人が帰ってくると、薪の消費量が確実に増えます(笑)」。

まっすぐのびる煙突が空間のアクセントに。じんわり暖かいストーブの前は、かりんちゃんの定位置だ。
シュークロークやシンクを設けた、ゆとりの玄関まわり。震災の教訓から、室内の扉は障害物に関係なく開閉できる引き戸を採用。

書斎はあえて個室にせず、階段横の通路にパソコンカウンターを造作し開放的なコーナーに。その延長にある寝室は、水回りとも連動する使い勝手のいい2WAYスタイルだ。天井高140cmのロフトはどこか隠れ家的な雰囲気があり、アマチュア無線を趣味とするご主人の基地にもなった。「もう、すべての場所がお気に入り。思った以上に広く明るく、義母も主人も大満足です」。

キッチンキャビネットの裏が書斎。パソコンに向かうとつい長くなる奥さまに、通路を兼ねたこの場所はこもらなくていいと好評。
庭が見晴らせるキッチンダイニング。
書斎側から見た寝室。正面の開口部はバスルームに続く。

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